しんれいやぐちのわたし

神霊矢口渡

とんべえすみかのだん

頓兵衛住家の段

この物語は、新田義興の死を中心に一族郎党の苦労をつづっている、平賀源内の代表作です。
頓兵衛住家の段は、五段形式の四段目です。

あらすじ

矢口渡守、頓兵衛はさきに義興の乗った船底に穴をあけ、義興を水死させた働きで恩賞にあずかり、豪奢な生活をしています。そのような頓兵衛とはつゆ知らず、頓兵衛が不在のとき、義興の弟、義峰は恋人の傾城うてなをともない頓兵衛の家を訪れます。頓兵衛の娘、お船は義峰に一目惚れし、二人をとめます。

一方、お舟を恋するこの家の下人、六蔵は義峰を討ち手柄をたてようとしますが、お舟が止めます。しかし六蔵は頓兵衛に義峰らのことを密告します。頓兵衛は義峰を討とうとしますがお舟が身代わりに切られます。

それでもお舟は必死になって父の強暴をいさめますが頓兵衛は聞き入れず逃げた義峰に追っ手をさし向け、村をとり囲ませます。

お舟は深手に耐えて、義峰が捕まったという知らせの太鼓を打って追っ手の囲みをとかせます。

このあと頓兵衛が義峰に追い付き捕まえようとします。そのとき、いづこともなく飛び込んできた矢が頓兵衛を倒します。矢は、新田家の宝、水破、兵破の矢で、義興の霊が弟を救ったのでした。