けいせいあわのなると
傾城阿波の鳴門
じゅんれいうたのだん
ゆきおんな
【原作】小泉八雲 【脚色】半藤一利 【演技指導】豊竹嶋太夫 【作曲】鶴澤清介 ●平成14年9月完成
南国のイメージが強い九州でなぜ「雪おんな」なのか?疑問に思われる方も多いと思います。かつて旧清和村は九州では大変雪深い土地で、冬には雪が吹き込み積雪も膝下まで達するほどでした。親たちは子供をたしなめるのに「『ゆきんじょ』が迎えに来るぞ」と脅かしたものです。この『ゆきんじょ』が雪おんなの事ではないかと思われます。
若い木こり巳之吉は、年老いた茂作と薪木取りからの帰り道、 吹雪にあってしまう。たどり着いた船頭小屋で、茂作は 「雪おんな」の言い伝えを巳之吉に話す。
いつしか眠りにつく 二人。だが、茂作に覆いかぶさる真っ白い着物の女に巳之吉が 気づく。その女は、「私を見たことを人に話したならば殺す」 と巳之吉に言い渡し雪の中に消えて行く。茂作はすでに息絶え ており、あまりの恐ろしさに巳之吉は気を失うのであった。
数年後、巳之吉は、山仕事の帰り道で偶然出会ったお雪という 娘と結ばれる。色白で気だても良く、娘が生まれた後も、美しさは変わらなかった。互いに思いやる日々の中、ある日、巳之吉は土産に赤い櫛を買ってくる。髪にさし、更に色香を増すお雪の姿を見てるうちに、巳之吉は吹雪の夜にあった雪おんなの 顔を思い出す。
お雪の顔は、雪おんなとうり二つであった。 その夜の話を聞かせてとせがむお雪に、巳之吉は重い口を開い てしまう。眼光鋭く雪おんなへと変身したお雪。
一度は巳之吉 に覆いかぶさるものの、母としての情にほだされて、娘の養育をきつく言い置くと、お雪は降る雪の中へ消えて行くのだった。